創業

起業家必見!融資審査で「通らない」を避けるための実践的ガイド(後編)

起業家として、ビジネスの資金調達に融資を考えることは一般的です。しかし、実際に融資審査を通過するのは簡単ではありません。元審査担当としての経験をもとに、審査をスムーズに通過するための秘訣やポイントをまとめてみました。この記事を読むことで、あなたの融資申請の成功率を高めるヒントが得られるでしょう。

前編をご覧になっていない方はこちらから
 

審査担当者とのコミュニケーション術

融資審査は、書類審査だけでなく、面談や面接も重要な要素となっています。審査担当者とのコミュニケーションの際のアプローチや態度は、審査の結果に大きく影響します。

明確なビジョンの提示

起業家としての融資申請の際、事業計画や数値だけではなく、その背後にあるビジョン、つまり「なぜその事業を始めるのか」という根底の思いを明確に伝えることは非常に重要です。ビジョンは事業の方向性や目的を示すコンパスのようなもの。具体的な数字や計画はそのための手段であり、実現するべき未来の姿がビジョンとして存在しているからこそ、意味を持つのです。

例えば、ある健康食品スタートアップの代表が、融資の面談で以下のように語ったとしましょう。「私たちの最終的な目標は、ただの健康食品の販売ではありません。日本の高齢化社会において、健康的な生活を送るためのサポートをすること。そのための第一歩として、この新製品を市場に投入する計画です。」

このように、明確なビジョンを提示することで、金融機関の担当者もその事業の意義や将来性を理解しやすくなります。ビジョンがはっきりしていることは、事業の持続性や経営者の情熱を感じるための大きなポイントとなるのです。

具体的なデータや事実に基づく回答

新しいビジネスの提案を行う起業家にとって、過去の自社データが存在しないことは一般的です。しかし、ビジネスの可能性や信頼性を示すための具体的なデータや事実は不可欠です。

例えば、新しい商品やサービスを市場に導入する場合、その業界全体のトレンド、競合製品の存在、ターゲットとなる顧客の属性やニーズなど、第三者の公的統計や業界報告を活用することができます。また、試作品やプロトタイプを用いて行った小規模なテストマーケティングの結果やフィードバックも、将来のビジネス展望の具体的な根拠として利用できます。

一方、提示するデータや事実は、その信頼性や正確性が求められます。公的機関や業界団体、研究機関が発表した報告や調査を引用することで、ビジネスプランの説得力を強化できます。

審査時の面談や質疑応答の際に、これらの第三者情報や初期のテスト結果を即座に提示できることは、起業家としての情報収集能力や計画の実現可能性を示すものとなり、融資審査を有利に進める要因となります。

正直さの維持

起業家として、融資審査を乗り越えるためには、正直さを維持することが不可欠です。審査担当者は専門家として、申請者の事業計画や資金の使途を詳しく評価する目的で接しています。その過程で、事業計画の不確実性やリスクを問い詰めることがよくあります。こうした質問に対して過度に楽観的な答えをするか、あるいは不都合な真実を隠蔽しようとすると、逆に信用を損なうリスクが高まります。

例えば、未知の市場に新しい商品を投入する際のリスクや、新規事業の競合状況について不明確である点がある場合、それを正直に伝えることで、リスクを認識し、適切な対策を検討していることを示すことができます。また、事業の弱点や不確実性を認めた上で、それをどのようにカバーするのか、強みをどう活かすのかを具体的に示すことで、計画の現実性や実行可能性をアピールすることができるでしょう。

正直さは、単に事実を伝えるだけではなく、その背後にある思考や考慮を共有することで、相手との信頼関係を深める手段ともなります。審査担当者とのコミュニケーションの中で、正直さを維持することは、長期的な信頼関係を築く基盤となります。

信用情報の管理と向上策

信用情報は、金融機関が融資審査を行う際の重要な要素となります。信用情報機関が各個人や企業の信用情報を管理しており、過去の取引履歴や支払い状況などが記録されています。

信用情報が持つ影響

信用情報とは、個人や企業の金融取引の履歴や信用状態を示す情報のことを指します。この情報は、金融機関が融資やクレジットサービスを提供する際の判断材料として使用されるため、非常に重要な位置を占めています。

具体的には、信用情報には、過去の借入れ状況、返済の遅延や未払いがあったか、そしてその額や期間などの詳細が記録されています。これらの情報が悪いと融資を受ける際に不利に働く可能性があります。例えば、過去にクレジットカードの返済遅延が繰り返された場合など、金融機関はその人の返済能力に疑問を持ち、融資の際に高い金利を要求するか、最悪の場合、融資そのものを拒否することも考えられます。

一方、良好な信用情報を維持していると、金融機関からの信頼が得られるため、低金利での融資や融資限度額の引き上げなどのメリットが享受できます。短期的な取引だけでなく、長期的なビジネスの信用構築にも寄与するため、常に信用情報を良好に保つことの重要性を理解し、適切な金融行動を心掛けることが求められます。

信用情報の改善策

信用情報は、私たちの金融活動全体に大きな影響を与える要素です。その中でも、過去の支払い遅延や債務不履行は特に重要です。これらのネガティブな記録が信用情報に残っている場合、融資の申請に支障をきたすことが考えられます。

もし過去に支払い遅延や債務不履行があった場合、そのネガティブな記録を速やかに解消することが最も重要です。過去の未払いを解消することで、信用情報機関に良好な取引履歴を築き上げることが可能となります。

特に、税金の滞納や社会保険料の未納は、信用情報において非常に大きなマイナスポイントとなります。これらの未納は、金融機関にとって大きなリスクとして認識されるため、速やかな支払いとその後の正確な取引履行が不可欠です。

税金や社会保険料などの滞納がある場合、まずは関連する機関に連絡を取り、支払い計画の再設定や分割払いの相談を行うことをおすすめします。これにより、滞納を解消し、信用情報の改善に繋げることができます。

結論として、信用情報を維持・改善するためには、過去の債務の解消と、特に税金や社会保険料などの適切な管理が必要です。これにより、安定した金融活動を継続するための土台を築くことができるでしょう。

信用情報の確認方法

信用情報は、融資やクレジットカードの審査時に大きく影響するため、定期的な確認と管理が重要です。

CIC、JICCなどの主要な信用情報機関が存在します。これらの機関では、個人が自らの信用情報を確認することが可能です。確認方法は、各機関のウェブサイトからオンラインでの照会や、窓口、郵送を利用した方法が一般的です。

信用情報の確認を行うことで、過去の支払い状況や現在の債務状態を知ることができます。また、誤った情報が記載されている場合、早期にその修正を依頼することも可能です。不正なアクセスや情報の漏洩のリスクを考慮し、確認や修正の手続きは注意深く行いましょう。

信用情報の正確な管理は、将来の金融取引にも影響を与えます。定期的な確認を習慣化し、健全な信用状態を維持していきましょう。


例えばCICでは下記のサイトから自身の信用情報を確認できます。
 

成功する融資申請の具体的なステップ

起業家や経営者にとって、資金調達は事業運営の重要なステップです。無借金経営を継続しつつも、投資や運転資金のための資金調達が必要となることは珍しくありません。ここでは、金融機関から融資を受けるための基本的な流れと、それぞれのステップで留意すべき点を紹介します。

融資を受けるためのステップ

1.申込み
2.必要書類の用意
3.面談・審査
4.融資の実行

申込み

最初のステップは、融資の申し込みです。初めての融資の場合、返済計画や借入れの期間、連帯保証人や担保の有無など、具体的な詳細をしっかり確認しましょう。
もし、取引している金融機関がない場合、預金通帳のある金融機関や事業を行う場所に近い金融機関を選ぶか日本政策金融公庫を選ぶと良いでしょう。
注意点: 金融機関との関係性を重視。初めての融資でも、信頼関係の構築が成功のカギとなります。
 

必要書類の用意

各金融機関は、融資の申し込みに際して特定の書類を求めます。事業計画書や返済計画書、必要に応じて見積もり書などを準備する必要があります。
注意点: 融資の目的や条件によって、必要な書類が異なる可能性があります。事前にしっかりと確認し、不備のないよう準備を行いましょう。

面談・審査

書類提出後、金融機関の担当者との面談が設定されます。この段階で、事業内容や今後の展望、融資の目的などについて詳しく説明する必要があります。
注意点: 審査は、金融機関の融資の条件やリスクを元に行われます。事業計画や返済計画を具体的かつ現実的に提示することで、審査の成功確率を高めることができます。

融資の実行

審査が通過し、融資が承認された場合、融資契約を結びます。契約が完了すると、指定の口座に融資金が振り込まれます。
注意点: 融資後の返済計画をしっかりと守ることで、次回の融資時にも好印象を与えることができます。返済スケジュールの遵守は、金融機関との信頼関係の維持にも繋がります。

資金調達は事業運営の重要なステップの一つです。適切な準備と正確な情報提供を心がけ、成功的な融資申し込みを目指しましょう。

終わりに:起業家としての資金調達の挑戦と未来

いかがでしたでしょうか。
起業家としての道のりは、多くの挑戦と試練が待ち受けています。その中でも、特に初期段階での資金調達は、成功への大きな鍵となります。この記事を読んで、融資審査の障壁やポイントについての理解が深まったことでしょう。しかし、それだけでは十分ではありません。実際の申請や対応、そして事業の継続という実践の中で、これらの知識やヒントを活かすことが重要です。

日本の経済情勢を考えると、中小企業や新規事業が国の経済を支える大きな柱となっています。政府や金融機関も、新しいビジネスや革新的なアイディアを持つ起業家を支援するためのさまざまな方針やプログラムを推進しています。これは、金融機関も単なる「審査する側」ではなく、「共に成長するパートナー」としての役割を担っていることを示しています。

融資審査を通過するためには、単に「お金を借りる」という行為を超えた、ビジネスパートナーとしての信頼関係を築くことが求められます。事業計画の質や返済計画はもちろん重要ですが、それ以上に、あなたのビジョンや情熱、そして継続的な努力が評価されるのです。

これからの時代、テクノロジーの進化や社会の変化がますます速くなる中、新しいビジネスモデルやサービスが求められる機会は増えていくでしょう。このような変化の中で、融資を活用してビジネスを拡大し、新しい価値を創出するためには、柔軟な思考とスピード感が必要です。

そして、最後になりますが、融資審査はあくまで「手段」であり、「目的」ではありません。真の目的は、あなたのビジネスの成功と、それを通じての社会への貢献です。審査に通ったとしても、それはスタートラインに過ぎません。その先に待つ真の挑戦とチャンスに、しっかりと向き合い、絶え間ない努力を続けることで、真の成功を手に入れることができるでしょう。

皆様のビジネスが輝かしいものとなることを心から願っています。
それではまた。

こんな記事も書いてます。