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起業家必見!融資審査で「通らない」を避けるための実践的ガイド(前編)

起業家として、ビジネスの資金調達に融資を考えることは一般的です。しかし、実際に融資審査を通過するのは簡単ではありません。元審査担当としての経験をもとに、審査をスムーズに通過するための秘訣やポイントをまとめてみました。この記事を読むことで、あなたの融資申請の成功率を高めるヒントが得られるでしょう。

融資審査の重要性と現実

起業の第一歩として、資金調達は避けて通れない道と言えるでしょう。中小企業庁の調査によれば、新規の起業家の約40%が資金調達のための融資を必要としていることが明らかになっています。これは新しいビジネスを始める際の初期投資や人件費、広告費など、多岐にわたる経費に対応するためです。

しかし、この融資がスムーズに進むわけではありません。多くの金融機関は、事業の成功の可能性や返済能力、担保の有無などを基に、厳格な審査を行います。実際、日本政策金融公庫の創業融資審査の通過率は50~60%と言われています。これは、金融機関がリスクを最小化するための一環として、事業の将来性や経営者の信頼性を重視しているためです。

このような現実を前に、起業する方は融資審査を通過するための適切な準備や戦略が必要とされます。具体的な事業計画や将来のビジョン、市場分析などの資料をしっかりと用意することで、金融機関に対する信頼を勝ち取り、資金調達の成功につなげることができるでしょう。

事業計画書の魅力的な書き方

事業計画書は、融資を受けるための「ビジネスのビジョン」を伝える大切なドキュメントです。成功した融資事例を振り返ると、その多くが詳細かつ具体的な事業計画書を提出しています。ポイントは以下の通りです。

①内容の充実性
②市場調査の活用
③財務計画の明確化
④戦略とアクションプラン

それでは一つずつ解説していきます。

①内容の充実性

具体的な数字やデータに基づく計画は、審査担当者にとって信頼性が高く見えます。例えば、「A社は、2026年に健康食品市場でのシェア拡大を目指し、3年後のシェア20%増を計画」といった明確な目標を設定することで、ビジョンの具体性が伝わります。

②市場調査の活用

市場のサイズや成長率、競合の動向などの市場調査のデータを取り入れることで、計画の現実性を裏付けることができます。例:「現在の健康食品市場は年間5%の成長が見込まれ、競合となるB社やC社との差別化も明確に示されています」といった分析を盛り込むことで、事業計画の信頼性を高めることができます。

③財務計画の明確化

事業の収益予測やコストの詳細な計画を明確にすることで、返済能力があることを示すことができます。実際の売上データや、将来の収益予測を具体的な数字で示すことで、融資審査の際にポジティブな評価を受ける可能性が高まります。

④戦略とアクションプラン

具体的な事業戦略や、その戦略を達成するためのアクションプランを明確にすることで、ビジネスの方向性や将来性を審査担当者に伝えることができます。例:「独自の製造技術を活用して、競合よりも20%低いコストで製品を提供する」といった戦略や、そのための施策を具体的に記載することが推奨されます。

市場リサーチの進め方

市場リサーチは、ビジネスの成功にとって不可欠なステップです。適切なリサーチを行うことで、ビジネスの方向性や市場のニーズ、競合状況を正確に把握することができます。具体的には以下のような手順を踏むことが推奨されます。

①市場のサイズと成長率の確認
②ターゲット顧客の特定
③競合分析
④市場のニーズとトレンドの把握
⑤リサーチ結果のまとめ

①市場のサイズと成長率の確認

上述の②市場調査の活用でも述べたとおり、まず、ビジネスを行う予定の市場の現在のサイズと将来の成長率を確認します。市場調査を行う方法としては公的統計データや業界団体のレポート・資料を活用することで客観的に市場のサイズや成長率を確認することができます。

②ターゲット顧客の特定

次に、具体的なターゲット顧客を特定します。例えば、若い女性向けの健康サプリメントを提供する場合、20代から30代の女性を主なターゲットとして設定することが考えられます。

③競合分析

同じ市場で活動する競合企業や製品をリストアップし、その特徴や強み・弱みを分析します。例: A社のサプリメントは価格が安いが、B社のものは高品質で知られている。

④市場のニーズとトレンドの把握

市場の最新のトレンドや未満足のニーズを把握することで、新しいビジネスチャンスを見つけることができます。例: 最近、植物由来の成分を使用したサプリメントへの需要が増加している。

⑤リサーチ結果のまとめ

最後に、行ったリサーチの結果を整理・まとめ、それをもとに事業計画や戦略を考える材料とします。

市場リサーチを行うことで、ビジネスの方向性を明確にし、市場での競争力を高めることができます。また、融資審査の際にも、しっかりとした市場リサーチのデータを提供することで、事業の成功の見込みや信頼性をアピールすることができます。

返済能力を示す方法

融資を受ける上で最も重要な要素の一つが、返済能力です。返済能力とは、借りた資金を計画通りに返済していくことができるかどうかの能力を指します。銀行や金融機関は、この返済能力を重視して融資の可否を判断します。

①収益予測の妥当性

金融機関は、申請者が提出した事業計画書の中の収益予測を基に返済能力を評価します。これは僕の経験則ですが、融資が承認された企業は事業計画書内の収益予測を現実的に設定してました。つまり過度に楽観的な収益予測よりも、現実的で具体的な数字が評価されるということになります。

②実績データの活用

既存のビジネスであれば、過去の実績データをもとに返済能力を証明することができます。
金融機関は返済能力を主にフリーキャッシュフローで見ます。
フリーキャッシュフローとは最終的な手残り現金のことを指し、簡易的にはキャッシュフロー計算書の「営業キャッシュフロー」+「投資キャッシュフロー」や損益計算書の「税引き後当期純利益」+「減価償却費」で計算することができます。

③事業計画の具体性

具体的で詳細な事業計画は、返済能力の証明にも役立ちます。計画内での収益増加の具体的なアクションや、新しい取引先との提携計画など、返済源となる収益をしっかりと計画していることが評価されます。


いかがでしたでしょうか。
後編では審査担当者とのコミュニケーション術や成功する融資申請の具体的なステップなどについて説明いたします。
 

それではまた。
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